非農家の私が実際に農地を相続して感じた4つのメリットとデメリットとは?

農家を営んでいる家庭では、親が元気なうちから子世代がノウハウを引継ぎ、自分も農業に従事していることがあります。

そのようなひとは親の遺産を相続するときが訪れても、戸惑うことなく不動産を引き継ぐことができます。

しかし農業の担い手が減りつつあるなか、実家を離れ農業とは関係ない仕事をして暮らすひとは少なくありません。

この記事ではこのような「非農家」のひとたちが将来必ず直面するであろう実家の相続、なかでも「土地の相続」についてメリットとデメリットの両面から考え、問題になるのはどのようなケースか検証します。

この記事を読めば、非農家のあなたが土地を相続するまでに考えておくべきことや、農地を相続したくない場合にどうすればよいかとその際の注意点が分かります。

非農家の農地相続の実態

農業を営むなら農地は有用な財産になります。

農業機械や設備、ほかにも種苗や肥料・燃料費など、農業経営には数百万の起業資金が必要なうえ、天候や市場価格に左右されるなど多くのリスクが伴います。

それらすべてのリスクを承知で農家になる強い意思があったとしても、作物を植える土地がなければ何もできません。

農業をするなら土地は絶対必要なものなのです。

いまの世の中、農家さんはとってもありがたい存在です!

やってみたら?

そんな簡単には始められません・・・

農家さんにとっては大切ですが、農業への興味も経験もないひとが畑や田などの農地を相続すると、放っておくうちに土地は徐々に荒れていきます

相続した農地を管理しないとどうなるかについてはこちらの記事で詳しくまとめてありますので参考にしてみてください。

このままではせっかく親が守ってきた土地が負の財産にもなりかねません。

非農家の農地は放っておくと「負の財産」になる心配がある

さて、この記事をお読みのあなたは、いつか農業をする予定がありますか?

「今のところは考えてない」というのなら、いつか土地を相続したときのために、次のことをアタマの片隅においていただければと思います。

非農家が農地を相続する4つのメリット

農地は本人のやる気次第で収入源にもなり得ます。

メリットがゼロではないことをはじめに知っておくと気持ちがラクになりますよね。

ここからは非農家が農地を相続する4つのメリットについてご紹介します。

農地を相続する4つのメリット

・農地のまま人に貸し賃料を得る
・農業を始めるチャンス
・収益物件として活用できる
・売却して利益を得られる

農地のまま人に貸し賃料を得る

ひとつめのメリットとして農地のまま人に貸すことが挙げられます。

たとえば農業を拡大したい近隣農家さんに使ってもらうことができれば、昔で言うところの小作料、つまり賃料が得られる可能性があります。

駐車場や賃貸アパートなどの収益物件ほど高い賃料は望めませんが、現状のまま貸し出しその土地に住むひとに安心して管理をお任せできる点が大きなメリットです。

相続した土地の今後の活用について、この間にゆっくり検討することもできるでしょう。

農地のまま人に貸すメリット
・その土地に住む人に安心して管理をお任せできる。賃料を得られる。

また各都道府県にひとつ「農地中間管理機構」が設置されています。

これは農林水産省が事業として行っているもので、土地の持ち主と土地を使用したい人をつなぐための取り組みです。

手数料はかかりますが、請け負ってくれる農家さんを自力で見つけられないひとにとっては、賃料を得られるチャンスとなるかもしれません。

給付金が支給される場合もありますので、気になったら自治体の窓口やJAに問い合わせてみるとよいでしょう。

農地中間管理機構とは
農林水産省が行っている取り組み。土地の持ち主と土地を使用したい人をつないでくれる。

農業を始めるチャンス

ふたつ目はあえての提案です。

今の暮らしとは全く違う可能性に挑戦するチャンスになるかもしれません。

もしあなたのご両親が現在農業に従事しているなら、高価な農業機器や設備などを新たにそろえる必要もなく、起業の最初の壁となるコスト面を大きくクリアできるでしょう。

田舎のご両親から今のうちに色々なことを教わって、少しずつ農業に馴染んでいくのも方法です。

将来相続が発生するまでに相続人のあなたが農業を営んでいれば農地にかかる相続税が実質ゼロになるというメリットもあります。その後支払い続けることになる固定資産税も低くおさえられ、かなりの節税になります

農業を始めるメリット
・実家に設備が整っているならコスト面で有利に起業できる。
・相続税や固定資産税などの節税対策になる。

収益物件として活用できる

地目の変更を視野に入れれば、相続した農地は収益物件にもなります。

・アパート・マンション経営
・駐車場経営
・自販機の設置
・太陽光発電地
・コインランドリー
・トランクルーム
・資材置き場

ほかにもたくさんの方法があると思います。

どの方法を選ぶかのポイントは、地域性とニーズをリサーチしその土地に合っているかどうかを見極めることです。

また、いずれの活用方法にもメリットとデメリットの両面があります。デメリットに注目し、リスクについてよく調べてから行動しましょう。

収益物件として活用するメリット
・地域性とニーズにあわせて色々な方法から選べる

売却して利益を得られる

4つ目のメリットは売却益を得られるということです。

転用して土地の種目を宅地などに変更すれば、農地のままの時より売却の可能性はぐっと高まります。注意しなければならないのは、農地はそのロケーションによって転用しやすい場所とそうでない場所があることです。

市街化区域の「第2種農地」か「第3種農地」ならば宅地への転用が可能です。

転用にはある程度の手間と時間、そして費用がかかりますが、宅地にすることで農地のまま売るよりも土地の価値が上がりますし、戸建てを建てたい家族にとっては、購入後の転用費用などを考えなくてよい点は魅力的にうつるでしょう。

農業振興地域でなければ転用できる場合がほとんどですから、地目を変更してから売れば、買い手はすぐに利用できるというメリットがあり、買い手の幅は広がります

自分が相続しそうな土地の区分を知りたい時や農地転用の手順がわからないときは、各自治体の農業委員会が申請窓口ですので、そちらに問い合わせましょう。

また自分で行うのが不安なひとは土地家屋調査士に依頼することで、複雑な手続き業務をすべてお任せでき安心です(私もそうしました)。

農地は食料自給率を左右する基礎になるため、農地法により簡単に売却できないよう調整されています。農業をするための田や畑がどんどん売りはらわれて無くなっていくことを防ぐためです。

農地のまま売るためには条件があり「地域の農業委員会に許可を得た農家であること」「農業従事者であること」のいずれかを満たしていなければなりません。

うまく買い手が見つかれば、宅地で売るほど高値ではなくとも、費用をかけずスムーズに売却することができるでしょう。

また手間をかけずできるだけ早く手放したいと考えているなら農地売買の経験が豊富な不動産会社に相談し、農業経営のための土地を探している人を紹介してもらうのが成功のカギです。

農地転用してから売却するメリット
・農地法の制約がなくなるため買い手の幅がひろがる。
・農地で買うより手間と費用をかけずに家を建てられるため不動産の価値が上がる。

・農地は区分によっては転用が難しいケースがある
 └農業委員会や土地家屋調査士に相談
・農地のまま売却できれば費用がかからず早く手放せる
 └農地売買に強い不動産会社に依頼

非農家が農地を相続する4つのデメリット

あらかじめデメリットを知りイメージしておけば、今のうちにできる対策が見えてくるかもしれません。

農地を相続する4つのデメリット

・管理がたいへん
・お金がかかる
・売却の目処がたたない
・自分の相続で負の財産になる可能性がある

相続後に農地を放置するデメリットについてはこちらの記事で詳しくご紹介していますので気になる方は参考にしてみてください

農地を放置するとどんな風に困るのかを色んな角度からまとめています

管理がたいへん

最初に挙げられるのが農地の管理のたいへんさです。

農業をする気がないからといってそのまま放置しておくわけにはいきません。

農業に従事していない人は普段あまり気にしないかもしれませんが、土地は誰かが定期的に草を刈ることで害虫や鳥獣被害から守られているのです。

もし現在実家から離れた土地で全く別のお仕事をしているのなら、その生活に「田舎の土地の管理」という新たなタスクが加わることを想像してみてください。

春から秋にかけて除草剤散布や草刈りのために実家まで足しげく通う必要がでてきます。

非農家の農地相続がいかにたいへんか、少なくとも悩みの種になり得ることがお判りになるでしょうか。

管理のデメリット
・手入れをしないと害虫や鳥獣被害にあう
・春から秋にかけて定期的に除草剤や草刈り作業に追われる

お金がかかる

使い途がわからないと持て余すことになる不動産。

特に売却が難しい農地の場合、単に持っているだけでは済みません。次のような費用負担をみておく必要があります。

・固定資産税
・資産額(課税対象額)によっては相続税
・登記費用・司法書士への報酬など
・除草剤や獣の忌避剤などの薬剤
・防草シートや杭、補修テープなどの資材
・農業用水路使用料(水を利用するしないにかかわらず)や水利組合費、水源(池など)周辺の定期的な掃除や草刈りに参加できない場合の欠席料
・草刈り機本体や替え刃、ナイロンコードなど
・草刈り機の消耗部品・故障にかかるメンテナンス費用
・除草剤散布のための噴霧器
・その土地に住んでいなくてもかかる区費や組費など自治会費

思いつくだけでもこんなにあります。

実際の費用については土地の面積や地域などによるため今のうちに実家の家族に尋ねておくか、ご近所の農家さんにアドバイスをもらっておくといいですね。

費用とは関係ないけど、水利組合などの役廻りもあたってきます!

お金のデメリット
非農家の農地管理は思っているより細部にお金がかかる。地域や面積によって負担額がことなるため、水利組合や自治会に前もってリサーチをいれておくこと。

売却の目処がたたない

農業従事者が減少傾向にあるため、農地の買い手を見つけるのは簡単なことではありません。

また転用して宅地に変更したとしても社会情勢が不安定な今は住宅用資材の入手が困難で、家を建てたくても建てられないひとが続出しています。

土地の売買が以前のように行われるためには、コロナやウクライナ危機による経済の混乱が落ち着きを取り戻すまで辛抱強く待たなければなりません。

土地が売れるためには「農業をしたいひと」「家を建てたい人」がそれを実行できる背景が必要です。

時勢をみながら長期的な視点で検討することも大切になってきます。

売却の目処がたたないというデメリット
農業人口の減少と不安定な社会情勢のため、農地の売却は数年前より落ち込み気味。

自分の相続で負の財産になる可能性がある

元気なうちはなんとか管理できたとしても、数十年もたたず自分も年をとります。

そのときまでに農地を売却するか収益物件として上手く活用できていなければ負の財産になり結局自分と同じ心労を子どもが抱えることになるかもしれません。

子どもが複数人いれば、管理責任をめぐってトラブルになる可能性もあります。

負の財産になるかもしれないデメリット
子どもに自分と同じ苦労を味わってほしくないなら、検討が必要です。

農地を相続したくなかったら

「やっぱり農地を相続したくない」と思ったあなたには次の選択肢があります。

・相続放棄する
・寄贈する
・相続の前に売却する
・国庫帰属法を利用する

ただし他の親族に影響が及ぶことがあるため、慎重に検討しましょう。

相続放棄する

相続開始日(被相続人が死亡した日)から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てを行えば、相続を放棄することができます。

ただしプラスの遺産(たとえば預貯金や株券、思い出のつまった実家など)の権利も含めすべての遺産を放棄することになります。

「農地以外には借金しかない」「マイナスの遺産の比率が高い」といった場合に相続放棄が選択されることが多いです。

また親世代に借金があり子どもが相続を放棄すると、ほかの兄弟姉妹や叔父や叔母が借金返済義務を負います。

事前に親族でよく話し合う必要があるでしょう。

寄贈する

不要な農地を地方公共団体などに寄贈すれば、プラスの財産は残せるうえ社会貢献にもなります。ただし必ずしもひき取ってもらえるわけではありません。

不動産の固定資産税は地方の重要な財源です。残念ながらよほどのメリットがある場合を除いて寄贈に応じてもらえないことのほうが多いようです。

駐車場の少ない公共施設の隣地、とか?

うーん、ケースバイケース。

・自治体以外の寄贈先には、個人や法人、町内会や自治会などがあります。

相続の前に売却する

そもそも売れる土地なら悩まないんですけどね

それもそうですが、たとえば財産が農地などの不動産しかない場合などは親族で相談して先に現金化しておくと相続時に分割しやすくなるというメリットがあります。

不動産は現金に比べて公平に分けることが難しいため、分割協議中に身内で分割の方法や割合をめぐって争いが起こりやすい傾向があります。

トラブルを回避しスムーズな相続を行うためにも不動産はできるだけ早く売却し、実家や相続人のために有意義に活用しましょう。

不動産を売却するとかかる税金は売却価格によって異なります。売却価格から取得費・譲渡費用を控除した譲渡所得に対して20%の譲渡所得税がかかることにも留意しておきましょう。

・不動産は現金に比べて公平に分けることが難しい。

国庫帰属法を利用する

国庫帰属法(相続土地国庫帰属法)は2021年4月に成立した相続した不要な土地の所有権を国に返還できる制度で、実際には2023年4月27日から開始される予定です。

ただしハードルは決して低くなく「国が定める10項目のいずれにも該当していない、相続等によりその土地の所有権を取得したひと」に限られます。

費用については審査手数料と10年分の土地管理費用相当額の納入が必要ですが、詳しくはまだわかっていません。

分かり次第お伝えしていきますね。

・国庫帰属法に期待!

非農家が「なんとなく」農地を相続するのはキケン

自分自身の生活で毎日忙しくしていると、実家の相続問題はつい先延ばしになりがちです。

しかし農家をするつもりがないまま何となく農地を相続するのはキケンです。

理由として次のようなことが挙げられます。

何となく農地を相続するのがキケンな理由

・土地管理と並行して実家の管理義務を負う
・ご近所トラブルになりやすい

土地管理と並行して実家の管理義務を負う

農地を管理するなら刈払い機やガソリン、除草剤などを安全に保管する場所として実家を利用することになるでしょう。

またトイレやシャワー、休憩のための場所として出入りしないわけにはいきません。

その実家を誰が相続しているかにかかわらず「誰か」が実家を管理することが求められます。

管理放棄された土地や家屋は結局近隣住民が自治会などと協力してボランティアで作業を行っているのが現状なのです。

もしあなたが農地の管理のたびに実家を利用する機会が多ければ、空き家の苦情は自然とあなたが受けるようになるでしょう。

また実家や土地の管理が行われないままでいると特定空き家に指定(自治体から勧告)され、固定資産税の優遇措置が適用されなくなる事態にも。そうなると更地と同様の最大6倍にまで税金が膨れあがる恐れがあります。

「相続したのは私ではないので関係ありません」は通用しません。

ご近所トラブルになりやすい

前述しましたが、放置された空き家や土地は近隣住民の負担になります。

古家にはイタチやタヌキ、アナグマなどが棲みつき、フン害に遭ったり、草木が伸びて道路側にはみ出たり。「ゴミ捨て場になっている」という話もよく耳にします。

自治体から相続人に連絡をいれても対策がとられない場合は、その家が建つ自治会のメンバーが協力して庭木を切ったり、下草を刈ったりして代理で管理を行うしかありません。

両親が亡くなったあとにこのような状況になるのは避けたいものです。

住民の手に負えなくなると「特定空き家」に指定されるのは時間の問題です。

相続したものの放置してしまう場合もありますよね。

そのほかにも農地を放置するデメリットはいくつかあります。

気になるかたはこちらの記事も参考にしてみてくださいね。

非農家で農地相続が心配なら相続前に不動産の正確な価値を知っておこう

ここまで読んだあなたは、農地相続について自分が何をすべきか具体的なイメージが湧いてきたでしょうか?

相続を体験し実家と農地を管理している私の立場から申しあげると、相続前にしておくべきこととは

実家の保有財産、とくに不動産の把握と価値を調べることです。

調べないとあとで困ります。

どうして困るのかというと・・

遺産の把握と価値を調べないとあとで困ること

・相続するべきかどうか分からない。
・放棄するべきかどうか分からない。
・売却するべきかどうか分からない。
・土地活用するべきかどうか分からない。

知ってたらもっと早く色んな手がうてた気がする・・

不動産は課税上の評価額と実際の売却価格がかけ離れていることが多いものです。

相続の財産分割は評価額に基づいて割合が決まり、差額は金銭の支払いで調整することになります。

管理の手間と評価額だけが大きな農地を引き継いだ相続人にはのちのち気苦労が多くなるため、結果的に相続人の間で不公平感が生まれることもよくある話です。

後悔しないためにも、所有不動産の現地におけるリアルな価格を把握し、相続人の間で情報を共有しておくことをおすすめします。

農家をする気がない人が農地を相続する場合のメリットやデメリットについてお伝えしました。

ここまで読んで農地の具体的な活用イメージが湧いてきたひともいるでしょう。農業をする気がなくても、相続した土地はあなた次第で色々な用途に活用できます。

一方農地を相続したくない場合には、相続放棄のほか寄付や相続発生前に売却しておくなどの方法がありますが、いずれの方法も慎重に行わないと自分以外の親族にも影響を及ぼし、トラブルにもなりかねません。

活用の目処がたたない土地を相続して後悔しないために、今から不動産の価値を確認して事前に準備しておくことをおすすめします。

なんとなく農地を相続して後悔したくないなら、相続前に知っておいてほしいポイントをまとめたこちらの記事も参考にしてみてくださいね。

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この記事を書いたひと
ハコT

40代、2人の子どもとプラモデル大好き夫の4人暮らし。売るに売れないワケあり5反の土地持ちです。春から秋まで草ボーボーのプレッシャーにうんざりな日々を、人生の後半戦で前向きにシフトしていきたくてブログをつづり始めました。日々の暮らしと並行した雑草対策10年目。同じお悩みをかかえるかたの気持ちが少しでも軽くなる記事をこころがけています。

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